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人は、五感の中で視覚情報の依存度は高く、とりわけ現代人は写真的かつ映像的なものを基準にする傾向があります。写実絵画は、視覚的な方向性から、写真のような絵が写実絵画として思われがちです。自ずと写真の模写のような作品が多くなっているようにみえます。カメラを使って絵を描くのが悪いというわけではないのですが、安易な写真の模写は、モチーフの本質までには触れていないのではないかと思っています。(さしずめ、お経の内容を知らず字を学ぶ際にする写経のようです。)写真からだけだと見て取れない現実があると思うのです。
写を頭にした熟語は写実と写真と写生と写意があります。写真は真を写すと書きますが、写実はモチーフの状態や本質を写す行為だと思っています。経験、体験のない物はリアルに感じないものです。初めての事や物に触れたとき、本物として認識できるかどうか?それを現代人の盲目的に信用している写真というツールを利用して伝えている事に多少の違和感を覚えています。

写真だけでは見て取れない、現実(本質)をとらえる

塩谷 亮

1975 年、東京都生まれ。武蔵野美術大学油絵学科卒業後イタリアに留学。フィレンツェにて文化庁新進芸術家海外派遣研修員を歴任。現在、二紀会会員、九州産業大学芸術学部客員教授、日本大学芸術学部非常勤講師。

大畑 稔浩

1960 年島根県生まれ。東京藝術大学大学院修了(1990)。白日会展初出品にて白日会賞、文部大臣奨励賞W受賞(1988)。新聞小説『天涯の花』(宮尾登美子著)挿絵担当(1996)。前田寛治大賞展準大賞(2001)。白日展にて内閣総理大臣賞受賞(2007)。現在、白日会会員。

五味 文彦

1953年長野県生まれ。武蔵野美術大学造形学部油絵学科卒業。2005年白日会内閣総理大臣賞、2018年MEAM ホキ美術館展出展。細密な静物画から、深淵な風景画、斬新な人物画まで、常に新たな写実絵画を模索している。

最終的には五感のすべてで感じたもの、これを目標にしています。絵は視覚的なものですが、視覚以外の感覚すべてで感じるものや印象に残る作品を目指しています。過去の絵のなかでは、モナリザは見ていて毎回自分の心境で見え方が変わるのですが、そんな存在として感情にも及ぶ作品を目指しています。

五感を総動員して感じる

坂本繁二郎という画家が「自分の自我をなくさないと本質は見えない」という事を言われています。私は、写実絵画の入り口を表している言葉だなと思っており、本質を見るためには自我を滅し無我にならなくてはいけない。(無我で物を見つめる事は、禅の修行のように思っています。)見つめるのは無我でも、そのままでは描く事はできません。モティーフを無我なる視点で見つめてその情報を得て、今度は自分が主体となってその本質を理解し、テーマとモティーフに忠実に思いを込めて描きます。私の場合、この風景に出会わせ、見せてくださった神様への感謝の思いを祈りの形で絵に残すことをこころがけています。

無我で見つめ、理解し、感謝の祈りで絵に残す

モティーフの真実を発掘するということが写実主義だと思っています。無我で状況を映像的に理解しつつも、ダ・ビンチがそうであったように、さらに踏み込んで情報を集めます。
例えば「霞ヶ浦の風景」であれば水質を調べ、生息している生物は?木の種類は?建物は?それを歩いて調べるわけです。そこの現場に行き写真を撮り、許される範囲で現場において採取して作品に貼り付けます。そういうことをやりながら仕事をしています。
その意味で、私の作品はこの美術館の中では変わった作品の部類だと思うのです。視覚的にとどまらず、現場で採取した砂など現物のものを貼り付けたりしているのですから。

踏み込んで、実際の“真実”を調べる

創造の源泉も、まず自分がいてこそで、無我になると言っても、全く自分がいなかったらそれも受け取ることができません。最初の自分は、できるだけ自然体でクリアな状態にして、自分が何に反応(感動)したかを素直に受け取れるようにしています。その時その時に見た光景がすごく自分の感性に引っ掛かった際に、感謝の思いが出てきます。それが絵にする動機となります。


絵を描く時の創造行為は、物を観察するときの創造、作画理念の創造、それを具現化するための技術や材料の使用方法の創造。現場では最低3種類あると思っています。その上で写真も撮ります。太陽など目視できませんし変化のあるものに対して人間の目は追いつきません。写真を記録として残しながら、その上で海でしたら潮の香りや風、照りつける太陽など。そういうのも肌で感じながらそれを思い出しながら描きます。

常に感動を受け取れる状態に

旅も好きですが、作画する風景は家の近所が多いです。最近はもう家の周りしか描いてなくて。自分に馴染まないと描けないのです。例えば奈良に行ったとして、そこで東大寺を描く場合には、その歴史を知らなかったら描けないのです。創建から何回建て直したとか、これは何という建築かとか。材質はもちろん創建時の環境など気になります。そして奈良の1年の天候とか調べ始めたら、きりがなくて。
 

また、見たこともない物に反応(感動)している自分もいます。光が一瞬当たったとか、ものすごく奇妙な建物を見たとか。そういう物に何か少し気持ちを一瞬ですが持っていかれてしまいます。日常の中のわずかな変化を取り上げることが好きです。

変化を求めて旅をする

作家インタビュー

大畑稔浩

1960 年島根県生まれ。東京藝術大学大学院修了(1990)。白日会展初出品にて白日会賞、文部大臣奨励賞W受賞(1988)。新聞小説『天涯の花』(宮尾登美子著)挿絵担当(1996)。前田寛治大賞展準大賞(2001)。白日展にて内閣総理大臣賞受賞(2007)。現在、白日会会員。

​大畑稔浩

Coming Soon

五味文彦

Coming Soon

旅にはカメラは必須ですね。写真から作画を決めるときもあります。気持ちを持っていかれる瞬間や変化を求めて彷徨いますが、自分の中でしっかりそれを確認して「やっぱりこれは感動した」というときにやっと絵にする時があります。1回見て感動するのではなくて、何度も何度も反芻して心に残ったものを絵にします。そして、そこから現場の取材が始まります。

何度も何度も感動を確かめ、そこで残ったものを絵にする

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時間がたっぷりあればやっぱり外国へ行ってみたいです。海外の環境はやっぱり見慣れてないので、どんな状況でもすごく感動します。とりわけ文化的に全く違う世界に行ってみたいです。重厚な文化があったところに自分の身体を置いてみて、長くそこで制作をしてみたいっていうのはありますよね。中でもヨーロッパのベルギーとかオランダのエリアが好きです。もちろんフランスやイタリア、ギリシャも興味あります。日本国内も全部知っているわけではないですし、まだ海外へ行けるのかどうかわからないですからね。

この先行ってみたい場所

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