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これはね、どういうところから言えばわかるかな。僕はダブルの世界やイリュージョンというのが好きで、つまりはどんなものでも物語性がある。例えばヨーロッパとアメリカの風景画のどこが違うかと言うと、アメリカの風景画は、人の歴史がないような風景なんだよね。ヨーロッパの風景画の景色はずっと培ってきたものを感じるのです。

例えば京都の街に石ころがあったとすると、これは昔近藤勇が躓いて、その250 年前に明智光秀もちょっと躓いて、その何年か前は木曽義仲がちょっと躓いていたけど、実際にはそういう歴史があるわけです。僕は風景を見ていても、どこかその誰かが初めて見る風景じゃなくて、ずっと自分が対話していた異世界のものをやりたかった。

自分が対話していた異世界の風景

塩谷 亮

1975 年、東京都生まれ。武蔵野美術大学油絵学科卒業後イタリアに留学。フィレンツェにて文化庁新進芸術家海外派遣研修員を歴任。現在、二紀会会員、九州産業大学芸術学部客員教授、日本大学芸術学部非常勤講師。

大畑 稔浩

1960 年島根県生まれ。東京藝術大学大学院修了(1990)。白日会展初出品にて白日会賞、文部大臣奨励賞W受賞(1988)。新聞小説『天涯の花』(宮尾登美子著)挿絵担当(1996)。前田寛治大賞展準大賞(2001)。白日展にて内閣総理大臣賞受賞(2007)。現在、白日会会員。

五味 文彦

1953年長野県生まれ。武蔵野美術大学造形学部油絵学科卒業。2005年白日会内閣総理大臣賞、2018年MEAM ホキ美術館展出展。細密な静物画から、深淵な風景画、斬新な人物画まで、常に新たな写実絵画を模索している。

だから自分がこの木霊の地を見たときに、自分が子供のときに林の中に入って行ってね。アミニズムなんて言葉があるじゃないですか。自然と一体化されて、その一体感になると自然なものがあったり物語性がある中で自分が一緒になって安らぎを覚えるようになるということなんだよね。

 

木霊に描かれた木は幼少の頃に実際に見たものではない。あれは自分のね、自分の頭の中で作った思い出の世界ですよ。そういうことなんです。だからあの形を借りて、自分の中の思い出を作った。

木霊とは自然に一体化された物語である

木霊とは、自分の中にずっとあるものだから。そのあるものを形にしたってことだね。例えば子供の頃に悲しかったことがある。例えば友達と嫌なことあって学校の近くの林の中に1 人入って行ってさ。木の中を歩いてさ、畜生とかそういうような気持ちを自分の中でぶり返して反芻して形にして。だから過去の思い出の中で創作しあの世界を作ったわけ。このモチーフを見たときに昔のこの世界が自然に出てきたなと。

思い出を反芻して創作した世界

苦労した点で言えば下にある葉っぱですかね。あれは物理的に苦労するよね。描くには面白いんだけどやっぱり労力がいる。もう一つ別のことを言うと、アンリー・ルソーというフランスの素人画家で、植物園で簡易的に植物をスケッチしたり、ライオンがいるジャングルの中で、自分がいるような架空の社会を作って描いた人がいるけど、そういう気持ちと実は似てるんです。雑草一つ一つが自分にとって物語なんです。

雑草一つ一つが自分にとって物語

実は僕は出不精でね。計画してやるとか大嫌いなので、旅はなかなかしてないのだけどもね。旅ではないけど、例えば東京に来たのが小学校6 年の修学旅行が初めてでね、そのときの旅の気持ちは今から言うと火星に行くような気持ちでしたよ。当時は鈍行列車でね。あれがやっぱり一番印象的だったよ。

 

迷宮みたいな場所が好きですよね。ヨーロッパの中世のごちゃごちゃした街。例えば日本でも古い寂れた街で細いごちゃごちゃした路地。ああいうところに入って行って、時間を忘れてポツポツ歩くのが好きだね。無に似た所で不思議な世界を旅出来るよね。ヨーロッパでもモロッコみたいなところは面白そうだね。

旅に記録を残す媒体は持って行くのは嫌いなんです。実はね、写真撮るのは大嫌いなんです。観光地なんか行くとね、みんなパシャシャやってるでしょ?女房とかに写せって言われたら携帯でちょっと撮るけど、自分がそこで楽しんだ印象だけが大事だからね。だから持って行かないんです。

迷宮では無に似た不思議な世界を旅出来る

旅の景色の中では夕焼けが好きですね。ただ夕焼けの風景が売れないというからね。それであれば迷路が良いかな。ベネチアの迷路みたいな水路は良いよね。イタリアなどのごちゃごちゃした中世の街並み、あの迷路も良いね。

 

でも現実に考えちゃうとさ、風景はあんまりやらないけれど、もし描くとするなら、夕焼けの風景などを描いてみたいと思うんですよ。太陽が雲間から金色に輝いてさ、そこでさ、天使がジャンジャン音楽でも演奏しててさ、走っていかないと陽が沈んでしまう、急いで描かないとと言う気持ちでね、天使の階段って光芒が雲間から拡がっている感じ、ああいう風景が良いよね。

光芒が雲間から拡がっている、そういう風景を描きたい

作家インタビュー

五味文彦

1953 年長野県生まれ。武蔵野美術大学造形学部油絵学科卒業。2005 年白日会内閣総理大臣賞、2018 年MEAM ホキ美術館展出展。細密な静物画から、深淵な風景画、斬新な人物画まで、常に新たな写実絵画を模索している。

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​大畑稔浩

五味文彦

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